舩橋淳監督 『フタバから遠く離れて 第二部』 (ポレポレ東中野)
3.11以降、双葉町の住民たちは埼玉県加須市に避難、または福島県内の仮設住宅で暮らしている。加須市内の廃校内に設えられたプライバシーのない避難所の暮らしはやはり貧しいもので、そこに取り残された人々は互いに身を寄せ合いながら毎日をやり過ごしている。仮設住宅にしても、世帯ごとに仕切られてはいるけれど、そのつくりはあまりに簡素で、そこに住む人たちによると、隣人の生活音がほぼ筒抜けになり、さらに共同トイレの音もそのまま聞こえてしまうのだという。憲法25条にある権利をいつ行使すればいいか、女性たちは笑いながら語っていた。
一方、井戸川前町長の不信任決議による辞任、その後任となる伊澤新町長で進められる復興政策など、町民を巡る政治状況も変化をみせている。しかし当然のことながら、政治の力だけで町民の暮らしが元通りになるわけではない。それどころか、諸々の政治判断によって、避難所は閉鎖され、帰る先であるはずの双葉町には核廃棄物の大規模な中間貯蔵施設が建設されてしまうのだ。
双葉町民の避難の様子を通して見えてくるのは、事故の影響に、政治に翻弄され、分断される人々の姿だった。残念ながら、この三年で事態が復興に向かっているようには感じられない。むしろ共同体は崩壊に向かっているのではないか。そう思える場面もある。
やはり、あれは取り返しのつかない事故だったのだ。少なくとも、ぼくが生きている間に双葉町が元の状態に戻ることはないだろう。少なくとも今の時点で、町の復興のための力を政治や科学は持ち合わせてはいない。悲しいことに、この第二部は完結編ではなかった。この事態がいつ完結するのか、この世界の誰にも分かりはしないだろう。
posted by Ken-U at 20:00|
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