荒木経惟 『69猥景』 (タカ・イシイギャラリー)
荒木経惟による6x9モノクロームの世界。

タイトルの通り、6x9判にて撮影されたモノクローム・プリントの新作は、どの写真も密度が濃く、なんといえばいいのだろう、水の世界から抜け出たばかりのようなしっとりとした質感があった。景色や裸体はもちろんのこと、もっとぎらぎらしているはずの道端ジェシカのような若いモデルたちの佇まいでさえ、その憂いのある眼差しも含めて、しっとりと濡れてどこか哀しくみえたのである。技術的なことはよく解らないのだけれど、このいかにも写真らしい湿度ある奥行きは、きっと撮影で使用された6x9カメラとどこか関係があるのだろう。こうした写真の特徴と、被写体から洩れでる吐息のようななにものかを捉えるアラーキーの技とが見事にシンクロして、この「猥景」の世界がかたちづくられたのだと思う。
世俗と離れた異空に身を置いているような気がして、それが心地よかった。かといって「猥景」であるから決してクリーンなわけでもなく、もっと中間的な、この世界と水の世界の間にあるどこかに身を漂わせているような気がした。
posted by Ken-U at 00:58|
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写真(荒木経惟)
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