2009年08月02日

「不確かなメロディー」 叶わぬ夢、旅、すべては水の泡に

杉山太郎監督 『不確かなメロディー』 (ヒューマントラストシネマ文化村通り)

マジカデミルスターツアーはゆく。

f_melody.jpg『瀕死の双六問屋』(過去記事)の連載中、紙面で繰り返し告知していたのがラフィータフィーによる「マジカデミルスターツアー」というライヴ・ツアーだった。このタイトルは、小箱のライヴハウスでスターを間近に見よう、という意味の滑稽な語呂あわせであり、実際、忌野清志郎をはじめとするラフィータフィーのメンバーは、みんなで一台のマイクロバスに乗り込み、この列島を縦断しつつ各地のライヴハウスを渡り歩いたのだ。本作は、その道程を収めたドキュメンタリー映像である。

まず、ライヴの質の高さに驚愕した。正直、RCサクセションの頃(とくに後期)よりずっといいと思った。あの頃は、和製ローリング・ストーンズとしてのバンドの位置づけであるとか、その中におけるキヨシローの役割を彼ら自身が意識しすぎるきらいがあり、正直、それを苦手に思ったりもしていたのだけれど、このラフィータフィーはその呪縛から完全に解き放たれており、おまけにメジャー・レコード会社の束縛からも解放されていたりするので、じつにピュアに、活き活きと、ありのままに裸の状態で音を放っていて、痺れる。なんといえばいいのだろう、もうギュンギュンにグルーヴが渦巻いているのである。

そしてライヴ映像の合間には、忌野清志郎(とほかのメンバー)のインタビューが挿入されていて、それもよかった。そこでは過去を振り返った清志郎が音楽を始めるころから現在に至るまでのいろいろについて語っているのだけれど、その声を通して、たぶん彼は音楽に支えられながらここまで生きてきたのだろう、そして歌手になることでその恩返しをしたかったのだろう、と思った。だから音楽に対してあそこまで誠実でいられたのだろう。きっと、そうあらねばならなかったのだ。

ライブの只中で突然、「俺には夢がある!」と彼は叫ぶ。「イエー!」っていう客に続けて、それはこの世界から戦争がなくなること。人を殺すやつも自殺するやつもいなくなること、それが俺の夢だ、とシャウトするのだけれど、しかし、すべては水の泡に。ぎゅんぎゅんのライヴも、狂乱する人々の熱も、バスの窓からみえる霞んだ空も、質素なホテルの部屋でふかした煙草のけむりも、すべては過去の闇の中に消え去ってしまった。もうこの世には存在しないのだ。しかし、それでもブルースは続く。失われた母なるものを想いながら。


posted by Ken-U at 16:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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