無から有へ。自然界から人間界へ。流れるもの。富、贈与。

その言葉の連なりは、のちの『カイエソバージュ』(過去記事)に受け継がれ、そして芸術人類学、あるいはくくのち学舎の一連の講座へと繋がっていったのだろう。そして感じたのは、人間の創造性と贈与、あるいは豊かさと悦びが心の深いレベルで互いに繋がり合っているということ。きっと、幸福は人間による悦びの創出、つまり創造の行為にかかっているのだろう。真の創造は悦びを生み、そして暮らしの中に豊かな富をもたらすのだ。
しかし創造的な仕事のための領域は、今、どれほど残されているだろう。自然界と人間界の狭間で仕事をする職人たちの歴史(過去記事)を紐解くまでもなく、自分がこれまで経験してきた職場環境の変化だけを考えても、創造的な仕事を成り立たせるための領域は間違いなく狭まりつづけている。
この世に生み出される富は限られている。そしてその希少な富を奪い合うのがビジネスなのだと思う。つまり、我々はすでに生み出された富を机上にのせ、我が取り分を明確にするために、その富の上に仕切り線を引こうと躍起になって右往左往しているにすぎないのだ。その有様はある種の戦争のようにもみえる。だから上層部は、ビジネスと戦争をしばしば重ねて語るのだけれども、しかしよりよい暮らしのためには、その文脈から外れ、悦びのための、新たな富を生み出すための仕事について考え、実践する必要がある。そうした新しい仕事との関わりについて、今後、試行錯誤を繰り返していきたい。