2010年09月05日

「民藝とは何か」 その余白は残されているか、民藝の未来とは

柳宗悦著 『民藝とは何か』 (講談社学術文庫)

民藝とは民衆が日々用いる工藝品との義です。(p.21)

yanagi_muneyoshi_mingei.jpgあるきっかけから、「民藝」という言葉の意味を理解したくなり、本書を手にした。

民藝品とは、民衆が日用づかいするために量産される工藝品のことで、本書ではそれが貴族的な工藝品(作家による作品群)との対比の中で語られているのだけれど、かといって、それは市場に溢れている工業製品とも異なり、民藝品は用のため、工業製品は利のために生産されるという性格の違いがあって、柳氏は、機械化され、濫造される製品群を雑器と呼び分けている。

そう考えると、今、市場を眺めたり、自分の、周囲の日常を見まわしてみたときに、「民藝」に位置する品々はほぼ皆無で、雑器ばかりが目立つ。民藝らしきもの、たとえば、musuburiの生地、10年1着の衣服などは手工藝であり、限りなく一点ものに近くて量産品ではない。あるいは、いわゆるセレクトショップの棚にみえるそれらしき品々も、こじんまりとした作家物か、いわゆる途上国の土産物的工藝品であり、本書で語られるような、民衆のための、普段づかいの、用のものではない。いまや民衆は、日用品を100円ショップやスーパーマーケットなど、廉価を売りにした商店群、あるいはネットで買い漁るのであり、あとはせいぜい無印であるとか、どちらにしても雑器に行き当たるしかないのだ。

とはいえ、日常の中につつましい美しさを求める心は、今も人々の胸の内に残されている。ただ、それは市場に溢れかえっている商品群というより、カフェやギャラリーなどで開かれる小さな展示会やワークショップなど、参加可能な空間で生み出される品々のような、量産品ではない、極私的なモノの中に見いだされつつあるのかもしれない。


posted by Ken-U at 19:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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