『Lava』(2008)と『Tidal』(2007)の上映

溶解する境界線。『Tidal』では生死の境界をさまよう少女の虚ろな瞳が、一方の『Lava』では、わたしの輪郭が溶けて液状と化す様子が観る者に強い印象を与える。少女の髪はゆったりとなびいている。眺めているうちに、意識がそのままあの世へと連れ去られそうになる。
高木正勝が生み出す映像の魅力はやっぱりそこにあると思う。あの世とこの世の境界が、あるいはこの「わたし」をかたちづくる輪郭が溶け、すべてが渾然一体となる。そのとき、わたしはわたし自身を破壊しようとする暴力を無防備に受け入れ、その刹那に全身をつらぬく悦びに身をゆだねるのだ。
暗闇の中、前方のスクリーンに一作ずつ交互に上映される。一作は三回ほど繰り返され、作品が入れ替わって、また数回反復される。それぞれは三分にも満たない小さな作品であるのだけれど、スクリーンが三面横に並べられていたり、それぞれの作品が反復されることも手伝って、作品世界に没入して濃密な時間を過ごすことができる。闇の中で仮死状態に陥る。