2008年10月27日

「この自由な世界で」 自由世界による拘束

ケン・ローチ監督 『この自由な世界で』 (シネ・アミューズ)

原題 『IT'S A FREE WORLD...』

人材派遣会社を解雇された女は、生き延びるために自ら派遣業を起こす。貧困に苦しむ移民たちを安価な労働力として企業に斡旋するのだ。

its_a_free_world.jpg当初、彼女は望むとおりにカネを得る。いろいろあったけれど、それまでの苦労が報われたのだ。貧しい移民たちは職を探しており、企業(工場)は安価な労働力を求めている。彼女はその橋渡しをしているのだ。善行である。その架け橋は虹色に輝いてみえる。彼女は、殖えていく手元の札束を眺めながら、これで周囲の誰もが幸せになる、と考えたかもしれない。しかし現実は厳しかった。たしかに、手元のカネは殖え続けているのだが、その一方で、まわりの人々とは軋轢が生じる。彼女は孤立する。

父親や友人とのやりとりなど、少し説教臭く感じられる演出もあったけれど、人間を不幸にするこの世の仕組みが日常の中に細かく描きこまれていて、よい作品だと思える。彼女は決して悪人ではないのだけれども、しかしこの冷酷な世界を生き抜くために、奪われる側ではなく奪いとる側に身を置こうとあがく。だからその立ち振る舞いがあたかも悪人のようにみえてしまうのだ。彼女はこの世界の自由に拘束され、身動きがとれずにいる。泥沼である。
posted by Ken-U at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画(その他の国) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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