女の生きづらさと沖縄。表題作ほか四編を収録。

けれども、表題作の「なんくるない」で世界が変わる。異なる世界に生きるひとりの男が、その閉じた世界を覆う膜を破り、その裂け目から女の内部に侵入しようとするのだ。女もどこかそれを期待していたのか、その侵入者を抵抗することなく受け入れようとする。そうしてふたりが交わり、異なるふたつの世界が混ぜ合わされることによって、それまで閉塞していた女の世界が活性化し、彼女の意識の中になにかが芽生える。
読み進めながら、やっぱりお父さんの影響が強いのだろうか、とか、半年ほど前に沖縄で死んだ自分の叔父のことなどを想った。沖縄の太陽と海は眩しく、人の心を惑わす。人を、生かしたり殺したりする。