2008年11月02日

「なんくるない」 閉塞した世界の破れ、生と死

よしもとばなな著 『なんくるない』 (新潮文庫)

女の生きづらさと沖縄。表題作ほか四編を収録。

nankurunai.jpg最初の「ちんぬくじゅうしい」と「足てびち」が少し読みづらかった。というのは、たぶんこの二編で描かれる世界がその語り手である女性の中で閉じてしまっているからだと思う。主人公と近しい世界を生きる女性の読者にはいいのかもしれないけれど、僕の場合、なんだかんだいっても男である、だから作品世界との距離が詰められず、感情移入が難しかったのだろう。途中、読むのをあきらめようかな、とさえ思った。

けれども、表題作の「なんくるない」で世界が変わる。異なる世界に生きるひとりの男が、その閉じた世界を覆う膜を破り、その裂け目から女の内部に侵入しようとするのだ。女もどこかそれを期待していたのか、その侵入者を抵抗することなく受け入れようとする。そうしてふたりが交わり、異なるふたつの世界が混ぜ合わされることによって、それまで閉塞していた女の世界が活性化し、彼女の意識の中になにかが芽生える。

読み進めながら、やっぱりお父さんの影響が強いのだろうか、とか、半年ほど前に沖縄で死んだ自分の叔父のことなどを想った。沖縄の太陽と海は眩しく、人の心を惑わす。人を、生かしたり殺したりする。


posted by Ken-U at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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