高木正勝 『タイ・レイ・タイ・リオ』 (めぐろパーシモンホール・大ホール)
タイトルの意味は、「波のように大きく振れ、小さく振れ」

初めての体験だった。気持ちは昂ってくるのだけれど、ロックやファンク、あるいはクラブ・ミュージックを浴びるときのように、それがからだの外へ向かうのではなく、内側にとどまり続ける。その空間には高木正勝の音楽と映像だけがあり、そこに立ち会う観客はいたって静かなのだけれども、かといって舞台と客席が乖離しているわけではなく、音楽と映像を唯一の媒介としてホール全体はひとつながりであった。あらためて舞台をみると、つかわれている楽器に統一性はない。が、そこから湧きあがってくる音楽には不思議な全体性が感じられる。そしてその波動は、同調する映像をも巻き込み不思議なグルーヴを生み出して、客席をのみ込み、さらに大きな波動となって私の心をふるわすのだ。
感激した。最後の最後までずっと静かに観ていたのだけれど、途中、涙と拍手の衝動に襲われ、どうしようかと思った。不思議な心持ちだった。人は、感激するとどうして拍手したくなるのだろう。などと、答えの出ない問いを心の中で繰り返したりしながらどうにか最後まで正気を保った。特別な時間はゆったりと流れているようで、ふと気づくと瞬時に過ぎ去っている。そこでは永遠と一瞬が交差している。
アンコールの最後、高木正勝のMCがあったのだけれど、彼は喘ぐばかりでなにも言葉にすることができなかった。息も絶え絶えに、もう真っ白です、と言うしかなかった。たぶんこのコンサートは、彼やほかの演者にとって最高の作品に仕上がったに違いない。もちろん、僕にとっても最高のひとときだった。いま振り返ってみても、あのときが奇跡のように思える。
posted by Ken-U at 23:21|
Comment(0)
|
TrackBack(0)
|
映像・音楽(高木正勝)
|

|