昨夏、ポラロイド社はインスタントフィルムの生産を終えた。バイバイ、ポラロイド。

さすがだなあと思ったのは、いわゆる即席プリントであるにもかかわらず、それぞれの写真がとても森山大道らしく仕上げられているという当然といえば極々当然なところで、しかしよくよく考えてみると、作家の手の届かないところでプリントされるポラロイド写真が作家の掌中にどうしてあれほど見事に収まるのか、職人の技とはなんとも摩訶不思議なものだとつくづく思う。さらに、それぞれの写真には、路地裏、擦れた広告、看板、窓ガラスやショーウィンドウの向こう側、空に走る電線、雲、唇、花、そしてユーモラスでありながらどこか哀しげにみえる自画像など、彼の世界が凝縮して詰め込まれている。その即席写真が、ギャラリーの壁(六面ほどだったか)にずらりと並べられているのだ。それは写真でありながら、映画であり、ライフであった。
ギャラリーの帰り、一緒に観たデザイナー(の卵・26歳・♂)といろいろ話しをしていたら、ライフですね、と珍しくいいことを言った。で、愉快になり、その後、わざわざ会社の最寄り駅まで立ちもどって、例の一軒家にあがりこみ、飲んで、食らった。ゆるりとしたいい夜だった。奢るかわりに、やつの「ライフ」という言葉をこっそり盗みとってやった。