2006年01月18日

「マルコヴィッチの穴」 映画業界の縮図

少し飲み過ぎ。で、少し早起き。スパイク・ジョーンズ監督の『マルコヴィッチの穴』、2回目の鑑賞。

being_john_malkovich01.jpg社会に適応できない芸術家肌の男、人形使いのクレイグ。彼は働きもせず、独りで人形を弄んでばかりいる。
彼の妻ロッテは傷ついた動物たちを引きとり、同居しながらその面倒を見ている。彼女にとって、クレイグはきっとそのケモノたちと同じようなものなのだろう。彼らの部屋の中で、クレイグはトラウマを抱えたチンパンジーとならべられているのだ。

そのロッテの強い勧めもあって、クレイグは就職をする。しかし、正常と異常とがどこか逆転してしまっているクレイグの目には、オフィスの光景はとても奇異なものとして映ってしまう。それに、同僚や上司との会話もすれ違いがちで、うまく会話を成立させることができない。

そしてある日、クレイグがオフィスの壁に開けられた抜け穴を見つけるところからこの物語は急展開する。マルコヴィッチの中へと続くこの抜け穴に侵入し、その身体を借りて世界を覗き見る行為は、秘められた人間の欲望を剥き出しにしていく。おそらく、この抜け穴は、映画という装置そのものを表しているのだと思う。

*****

作家の苦悩を描いたこの荒唐無稽な物語は、監督の私的心情が下敷きになっているのではないだろうか。そして、悲喜劇的ではあるけれども、悲しい、喜しい、というよりも、どことなく恐ろしさを感じさせる。

結局、クレイグが見つけたあの装置は彼自身のものにはならず、永遠の命を生きようとする老人たちに奪い返されてしまう。これは映画業界の力関係を表しているのかもしれない。19世紀に建築されたというあのオフィス・ビルは近代の象徴でもあり、その隙間に造られたいびつなフロア(7・1/2階)は映画業界そのものを表しているのだ。

*****

クレイグと関係するふたりの女性、ロッテとマキシンを眺めていたら、ソフィア・コッポラのことを連想してしまった。彼女たちはペニス願望を抱えた強欲な女として描かれているのだけど。それに、糸に吊るされた操り人形からは『ゴッド・ファーザー』、マルコヴィッチがみせた踊りからは『地獄の黙示録』が連想された。いろんな意味で、コッポラ色を強く感じてしまう作品だった。


posted by Ken-U at 15:40| Comment(0) | TrackBack(3) | 映画(USA) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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