『ボリビア 資源大国の苦悩 〜開発に揺れる住民〜』
銀やリチウム、天然ガスなどの豊富な地下資源に恵まれながら、ボリビア国民は貧しい暮らしを強いられている。現地ジャーナリストのフランシスコ・ギズベルト氏がその背景を追う。

2003年10月。政府の天然ガス輸出政策に対し、多くの先住民がデモを起こした。当時のサンチェス大統領は、武装部隊にデモの鎮圧を命じる。この鎮圧行動は70名以上の死者と300名以上の重傷者を出し、これが発端となって、大統領は退陣に追い込まれ、国外へと逃亡した。アメリカ政府はこの混乱を受けて、”民主的”な政権が暴力によって転覆されたとして、デモに加わったボリビア国民を強く非難した。
ポトシ
ボリビアにおける搾取の歴史は16世紀にまで遡る。当時、ローマ帝国皇帝も兼ねていたスペイン国王、カルロス5世はボリビアをスペインの植民地とした。
1545年、ボリビア先住民がポトシ銀山を発見すると、スペインは先住民やアフリカ人を奴隷としながら、この銀山の採掘を開始した。ここで採掘された銀はヨーロッパへと渡り、資本主義の発展を支えることになる。奴隷制度は19世紀に途絶えたが、その搾取の構造は今も根強く残されている。
1952年、ボリビア革命によって鉱山は国有化された。しかし行政の官僚主義や贈収賄による腐敗によって、国内経済は破綻の危機に追い込まれる。1985年、世界銀行とIMFがその救済に乗り出したが、その結果、国営企業の民営化が進み、国内資源の国外流出は加速してしまう。民営化の際、アメリカを中心とした外資系企業が鉱山の採掘事業に参入し、数万人の鉱山労働者が失業した。外資系企業に雇用された労働者たちは、劣悪な環境の下で労働を強いられることとなった。
サンクリストバル
新しい鉱山の開発は、アメリカを中心とした外資系企業によって今も続けられている。近年ではサンクリストバルに新たな鉱脈が発見され、ポトシの再来として注目された。企業側はサンクリストバル住民を村ごと移転して銀の採掘に乗り出す計画を立て、住民側は雇用を条件にそれを受け入れた。しかし銀価格の下落により開発は一向に進まず、移転後の村には電気も供給されないまま、住民は半ば放置されてしまっている。畑も奪われ、食材の自給もままならなくなった住民は、極貧の中で途方にくれるしかない。
アパチェタ
資源開発事業が地域に貢献している事例として、ティエラ社が紹介される。ティエラ社はカピーナ塩湖からホウ酸などを製造する事業を手掛けており、製品は国内向けに供給されている。得られた利益は地域住民の職業訓練やライフラインの整備、医療サービスなどに還元され、地域住民の生活水準向上に寄与している。
しかし、2000年8月、ボリビア、チリ、アメリカから100人を超える捜査班がティアラ社を訪れ、会社の上層部を逮捕し、工場を強制的に閉鎖させた。容疑はコカイン製造を目的とした硫酸の横流しとされたが、その証拠は示されていない。しかし当局は、同社が2000台のトラックを使用して硫酸を供給したと主張している。その量は、50年分のコカイン製造に利用可能だとされている。
従業員による7ヶ月間にわたる運動の末、工場は再開されたが、会社のトップであるローランツ氏には12年の実刑が言い渡された。氏は上訴し、裁判はその後も続けられている。
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政府の”民主化”、および公共事業の”民営化”によって、ボリビア国内の富はアメリカを中心とした西欧諸国へと流出を続けている。独立国家とはいえ、ボリビア政府にはアメリカからの強い圧力がかかっているため、その状況を変えることは容易ではない。外資系企業から流れる巨額の賄賂や、コカイン製造の取り締まりを建前としたアメリカ政府の弾圧行為などを背景として、アメリカ大使の承諾なしには国政の判断が下せないという状況に陥っているのだ。
エボ・モラレス新大統領の姿が映し出される。彼はボリビアの状況を変えると宣言するが、新政権には困難な問題が数多く残されている。
ラストではポトシにあるウユニ湖が紹介される。この塩湖の下にはリチウム資源が眠っており、その規模は世界最大ともいわれている。モラレス新政権は、その開発をどう導くのだろうか。
こちらのブログは、情報量が多くてすごいですね。また、参考にさせていただきます。
情報量のことはよくわかりませんが、細々と記録をしています。
自分と同じようなところを書いてらっっしゃるので、何となく嬉しくなりました。
コメントありがとうございます。こちらからもTBさせていただきます。