マジカデミルスターツアーはゆく。

まず、ライヴの質の高さに驚愕した。正直、RCサクセションの頃(とくに後期)よりずっといいと思った。あの頃は、和製ローリング・ストーンズとしてのバンドの位置づけであるとか、その中におけるキヨシローの役割を彼ら自身が意識しすぎるきらいがあり、正直、それを苦手に思ったりもしていたのだけれど、このラフィータフィーはその呪縛から完全に解き放たれており、おまけにメジャー・レコード会社の束縛からも解放されていたりするので、じつにピュアに、活き活きと、ありのままに裸の状態で音を放っていて、痺れる。なんといえばいいのだろう、もうギュンギュンにグルーヴが渦巻いているのである。
そしてライヴ映像の合間には、忌野清志郎(とほかのメンバー)のインタビューが挿入されていて、それもよかった。そこでは過去を振り返った清志郎が音楽を始めるころから現在に至るまでのいろいろについて語っているのだけれど、その声を通して、たぶん彼は音楽に支えられながらここまで生きてきたのだろう、そして歌手になることでその恩返しをしたかったのだろう、と思った。だから音楽に対してあそこまで誠実でいられたのだろう。きっと、そうあらねばならなかったのだ。
ライブの只中で突然、「俺には夢がある!」と彼は叫ぶ。「イエー!」っていう客に続けて、それはこの世界から戦争がなくなること。人を殺すやつも自殺するやつもいなくなること、それが俺の夢だ、とシャウトするのだけれど、しかし、すべては水の泡に。ぎゅんぎゅんのライヴも、狂乱する人々の熱も、バスの窓からみえる霞んだ空も、質素なホテルの部屋でふかした煙草のけむりも、すべては過去の闇の中に消え去ってしまった。もうこの世には存在しないのだ。しかし、それでもブルースは続く。失われた母なるものを想いながら。