指揮:ヴァニャ・モネヴァ

コンサートは、1曲を除くとほかはすべてアカペラで、20人前後だったか、それぞれに異なる民族衣装をまとった女性たちが、彼の地に伝わる民謡などを独特の音色で響かせていて摩訶不思議な味わいがあった。摩訶不思議というのは、その声の重ね方がユニークなのだ。あとで調べてみると、ブルガリアの合唱スタイルは西欧のものとは少し異なり、その和声の中にいわゆる不協和音がつかわれるという。しかし実際に聴いてみると、その不協和音に不協は感じられず、むしろその不協が声の響きに独特の奥行きを与えているように思える。西欧でありながら西欧だけではなく、中東やアジア、あと、ロマなどの文化が混ざり合いながら熟成されたブルガリア、そしてバルカンの奥深さ。そこはきっと不協の和の半島なのだと感じた。
ちなみに、彼女はソフィアの出身で、彼女が教えてくれたその土地の民族衣装はいちばんきらきらと派手であった。