2010年02月14日

突然の帰郷

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2月8日(月) 曇り時々雨

妹の死の知らせを聞いたのは、たしか、朝の七時頃だったと思う。

いったん出社。上層部に事情を話し、一時間ほど仕事をして、この日から忌引き扱いで帰宅をする。で、PCにてフライト予約。荷造り。近くで昼食をとり、携帯から一件のみ業務連絡をして、羽田へ。

着陸。トイレをすませ、ネクタイを締め、荷物を受けとって、伯父に連絡をとる。通夜が翌日になることを聞き、ネクタイをほどきながらバス乗り場へ。移動。すぐに雨が降り出し、車の窓を濡らす。

車窓から雨が上がっていることを確認して、降車。そこから徒歩にて斎場まで。すでに日は落ちており、周囲は暗い。車の往来も寂しく感じられる。また携帯を取り出し、歩きながら、金曜の面接をキャンセルするかもしれない、とエージェントに伝える。あちらは困惑の様子。

到着。部屋の扉を開ける。当然のことながら、大方の親族はすでに座敷に腰を下ろしており、誰かに促され、横たわっている妹と対面。眠っているようにみえる。焼香。その後、トイレに入り、そこに居合わせた伯父に死因を訊く。部屋に戻り、座敷に上がり込んで、久しぶりに顔を合わす面々と挨拶を交わす。約二十年ぶりになる従姉も入ってくる。微笑。言葉を交わしてしていると、和尚の来場。読経。泣いたり、泣かなかったり。

深夜、座敷の脇で母が眠り、弟と言葉を交わしながら朝まで。にぎり飯を食いながら、線香の煙を気にしながら。

*****

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2月9日(火) 曇り時々雨

朝、窓から駐車場を見下ろすと、雨が上がっている。しばらくして祭壇の模様替えが始まり、湯灌。約二時間ほどをかけて、妹の身体を清める。心なしか、表情がより穏やかにみえる。お気に入りだったという和服を着せ、化粧もほどこしてもらう。そして納棺。終始手際がよく、感謝の気持ちがこみ上げてきて、最後、深々と頭を下げる。

留守番の後、買ってきてくれた弁当を掻き込む。死因について、諸々から聞いた情報を元に、母と話す。いわゆる突然死だったのだ。だから明確な死因がない。それがいろいろな詮索を誘発して、母の心を乱していた。自死だとか、仕舞いには先週死んだ叔父が連れていったとか。そんなことは、もういい。

通夜。事前の説明を聞き、和尚の来場。読経。泣いたり、泣かなかったり。その後、親族と昔話など。笑いもあり。従姉は旦那と来場していた。読経後は終始にぎやかで、涙あり、笑いありで、逞しい親族に救われる思い。

途中、傘を持って退席すると雨が上がっている。で、そのまま叔父の家に向かい、焼香。先週、その伯父が亡くなっていたのだが、葬儀にも出られず、でもこうして遺影を前に手を合わせることができて、少し安堵。ひとしきり会話をして礼をいい、斎場へと戻る。部屋はすでに閑散としていた。着替えて、弟と話しながら夜を過ごす。リスボン旅行のこととか、話した。

*****

2月10日(水) 雨時々曇り

早朝、物音で目が醒める。いつのまにか眠っていたようだ。みると、母が片付け、洗い物などうろうろとしている。寝ているように言っても、落ち着かないのだろう、おろおろとするばかりで少しいらつく。少しして、着替え。

出棺。このとき遺影を抱えて歩いたのだけれど、今回、これが一番つらかった。妹はたしかに死んだのだ、という重い現実をここで最後に思い知らされたように思う。

火葬。待合室に入りしばらくは喋れず。しかし、少しして、従姉、叔母、母と話しているうちに心ほぐれる。また笑った。うれしかったのは、従姉が、すっかり忘れていた幼少時のエピソードを披露してくれたことで、そんなことまで憶えててくれたのか、と思わず顔がほころぶ。

寺へ移動。葬儀。気分はすでに落ち着いている。その後、皆で弁当。やはり賑やかである。祖父のときに、お骨を忘れて帰ろうとしたことなどを思い出して、皆で笑った。そして食べながら、去年に亡くなった別の叔父と諸々のご先祖のために、墓を参ろうと話す。

玄関に戻ると雨。みな嘆いている。しかしここで、ああ墓参りしようと思ったのに、と言った途端、雨が上がる。みな驚きの声。で、今のうちにと花を取り、小走りに墓へ向かい、花を沿え、線香をあげて、合掌。ここで小さな奇跡を感じた。

その後、自宅に戻り、仏壇のまわりに妹の骨壷、遺影、花などを据える。そのうち従兄弟も集まり、叔母もリハビリのあとに駈け付けてくれて、食事会。久しぶりに顔をあわせることもあって、これが大騒ぎ。賑やかに過ごすことができ、救われる思い。そして切れかけていた縁が、ここで修復されたのだ。

*****

2月11日(木) 雨時々曇り

昼、従姉が旦那と娘を連れて挨拶に来てくれる。その後、弟と伯父(長男)のところへ。礼をいい、お茶をご馳走になって、犬と戯る。それからスーパーで食料を買い込み、帰宅。簡単に夕食をすませる。この日からTVも点ける。で、会話は深夜まで続き、就寝。

*****

2月12日(金) 曇り時々雨

昼前に起床。昼食後、弟が先に戻る。見送り、母と仏具屋へ。それからスーパー、デパートとまわり、帰宅。夕食。会話は朝方近くまで、そして就寝。

*****

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2月13日(土) 雨のち曇り

昼に起床。朝方の雨が上がっている。すぐに荷造り、昼食。風が強い。小さな縁側にはバケツに花束が活けてあり、それにすだれがぶつかってこんこん音を鳴らし続けている。通夜のときに、従姉が、この世に漂う霊が風になると話していたのを思い起こした。俺はもうすぐ帰るのだよ。そして母と言葉を交わし、挨拶をして、駅のバスセンターへと向かった。

バスの中では、ずっと雲を眺めていた。

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空港。少しの土産と、自分のために明太子、さつま揚げを買い込み、搭乗。

着陸。寒そう。雨も降っている。いよいよ降られるのか、と覚悟しながら移動。がしかし、駅に着き、地上に出ると雨が上がっている。帰宅。夕食は生メカジキのソテー、プチトマトのソースを添えて。

*****

突然のことでやはり動揺もしたのだけれど、逞しい親族に支えられたこともあって、どうにか無事に妹を送ることができた。それに、送るための諸々の儀式もよい経験となった。数日をかけながら、非日常的空間の中で、少しずつ死を死として受け入れていくことができたような気がする。もちろん、まだ完全に受け入れることはできていないけれど、これも時間が解決してくれるだろう。

死は引き裂くが、同時に繋ぐのである。ということを、妹の死を通じで体感することができた。私は、妹が遺してくれた、与えてくれたこの関係を大切に生きていきたい。それがなによりの供養になるのだと信じて。
posted by Ken-U at 23:41| Comment(6) | TrackBack(0) | 日常のひとコマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
仕事で慌ただしくしており、久しぶりにブログを見に来て驚いています。
私も4年前に同じ経験をしましたが、さぞやお辛かったことと思います。
謹んでお悔やみ申し上げますとともに、妹さんの安らかな眠りをお祈りしております。
Posted by kagurazaka at 2010年02月18日 16:59
ただいまkagurazakaくんよりメールで連絡をもらいました。
謹んでお悔やみ申し上げます。
Posted by (秀) at 2010年02月18日 22:01
お久しぶりです。
私は、父が亡くなったとき、慌しく葬儀で日々が駆け抜けていったのですが、よく覚えていません。
自分でも忘れたかったのかもしれません。
死ぬ間際ではなく、元気だった頃の姿をよく思い出します。
Posted by トーマス at 2010年02月26日 04:57
トーマスさん、お久しぶりです。

ぼくは、亡くなった妹との思い出があまりないので、彼女がこうして急にいなくなった場合、その不在を埋めるための手立てがなく、呆然とするしかありません。死は確かに現実なんですが、もうひとつピンとこないというか、これはなんなのでしょう、子供の頃の妹の姿と、最近の姿と、あの屍と白骨との繋がりが、まだよく飲み込めていないのかもしれません。ただ、お骨を拾っていたときに顔に受けた熱、匂いの記憶が鮮明に残っています。
Posted by Ken-U at 2010年02月27日 20:12
どうもお久しぶりです。この記事に気づいてませんでした。自分も幼い頃に父を亡くしましたが、そういう経験が確実に人生観に影響を与えてます。それがなぜかネットを通してブログなど発信する際に自覚することがあります。家族を失ったこととそうでなかったらどういう違いがあったろうって今でも考えます。変なこと言ってすいません。ブログを通して自分もショックを受けたってことを伝えたかったです。
Posted by so-jaded at 2010年03月22日 03:54
so-jadedさん、ほんとお久し振りです。でもさるさるはチェックさせてもらってますよ。

あなたがお父さんを亡くしていることはブログを通して知りました。実は、僕にも父はいない。生き別れですけど。やはり、それからいろいろあって、そして妹が逝ってしまいました。僕にとって妹の死はたしかにショックで、それはどのくらいショックなのかが今でもよくわからないくらいショックなんですが、それ以上に、彼女が死に至るまでのこと、それまでの関係のこととか、考えることが多いです。あなたが言うように、この死も僕の人生に大きな影響を与えるでしょう。でも、それはマイナスばかりではない。死を通してもたらされるものもあるのだ、ということを彼女の葬儀やその後の出来事を通して感じてます。そうしたいろいろを感じ、引きずりながら、僕は生きていきます。

コメントありがとうございました。
Posted by Ken-U at 2010年03月22日 11:20
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