
3月2日(火) 曇り?
未明、起床。慣れた手さばきで仕度をする。またなにか忘れてしまうのだろうなあ、なんて思いながら。
出発。すでに周囲は明るい。地下鉄。バス。空港でなにか食べただろうか、おそらくなにも食べずに搭乗。軽食、軽飲。ときどき読書、映画。そして睡眠。
経由地、着。ラウンジに入る。今月いっぱいでこのラウンジ権を喪失してしまう。不便だけれど、なきゃないでいいか、とも思う。
搭乗。現地着。両替。タクシー。ホテルにてチェックイン。軽く荷解きした後、ホテル内にてリゾットと赤ワイン。入浴後、就寝。
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3月3日(水) 曇りのち雨
朝、地下鉄にて現地。皆と挨拶。マルティニから、現地の流儀で挨拶せよといわれ、彼女の両頬にキス。今回の新顔はアレッサンドラ。それから資料の受け取り、準備、サンプルの確認。エミリオがすぐいじりに来て、現地語は?と訊くので、ノーというと、なんじゃそりゃ、って大げさな仕草で、ブロブレームって言いながらどこかへ姿をくらます。
昼食後、周囲と馴染みながら、サンプルの撮影。と、ここで変化に気づく。バーにあれがないのだ。うまいプロセッコが見当たらないのである。その後、新たに契約したというプレス・スタッフと挨拶。彼が撮影したというフォトはそれなり。

職場の空気を掴んだのち、挨拶をして、やや早めに退席。ホテルに戻る前に、あるショップを訪問。しかしなにも買わずに退散。夕食はいつものトラットリアにて。リゾットにトマトとルッコラのサラダを添える。もちろん赤ワインも。
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3月4日(木) 雨
午前、例のフリーランスを交えてミーティング。その後はヒマ。なので、会場内を幾度となく徘徊する。午後、接客。スムースに事が進む。で、またヒマ。徘徊。夕刻、フリーランスが来場。ふたりで別会場を徘徊。タダ酒にありつく。
夜は社長、ミレーラと四人で夕食。雰囲気のよい店で、和気藹々。価値のわからんあの会社はどうでもいい。が、おまえとは仕事を続けたい、モルト・ブラボー。と、信頼を伝えられるが、嬉しくもあり、苦しくもあり。なので、先はどうなるかわからないと言ったが、フリーランスの策略か、思うようには伝わらず。
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3月5日(金) 曇りのち晴れ
午前、商談。これは軽く親睦を深める感じ。で、昼食。午後はアレッサンドラ、ミレーラと雑談。アレッサンドラ、彼女は普段、損保の仕事をしているらしく、それぞれの事故の詳細をみているとファニーだ、という。でもその滑稽さが人生そのものなのだよと、思うだけで口には出さず。
夜はピッツェリアでひとり軽く。その後、ホテルにてオーダーのまとめ、深夜一時過ぎまで。で、就寝。
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3月6日(土) 晴れ
午前、エミリオとじゃれながら時間を潰す。で、昼食後、まとめたオーダーをシートに記す。黙々と。と、ちょうど終わる頃にマルティナが近寄ってきてプロフェッショナールと声をかけてくれる。その後、互いの情報を交換。で、頃合いを見計らってミレーラに書類を渡し、いろいろ確認をして、しばらくぶらぶらして、社長に挨拶、皆に挨拶、最後はマルティナ、アレッサンドラにキスをして、ああ馴染んでしまっているよなあ、なんて思いながら会場を後にする。が、不思議と心は落ち着いている。

その後、会社から来ている別のふたり組みと合流。がしかし、なんだこのコらは。道路をふらふら歩いてトラムの妨害をするし、車が来ているのに渡ろうとする。何度「危ない!」と叫んだことか。で、挨拶なしに店に入ったかと思うと手当たり次第に商品を手に取り、ああだこうだして、その姿はまるで猿の如く。仕舞いに店の者から注意され、なぜか俺を睨んで退散する。もうわけがわからず、疲れていたし、ふたりから離れてひとり休息、プロセッコ。すると携帯が鳴り、一方的に文句を言われ、もうホテルに帰ります、と宣言され、終結。
夜、別のトラットリアで夕食。夜ここをつかうのは初めてだったのだが、まずまずではないか。で、ひとりでボンゴレ・ビアンコを食べていると、隣のユマ・サーマン崩れが、グッド?って訊くので、グッド、と応え、すると、私も同じものを食べたの、という。はいそうですかって感じで、でもとりあえず微笑み、向こうも微笑んで、たしかに、ここのボンゴレはまずまずであった。
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3月7日(日) 晴れ
朝、仕度をして朝食。チェックアウト。タクシーにて空港まで。ゲート前で取引先のバイヤーとばったり。いろいろ話す。奴の言葉は常に皮肉交じり。移動。着。荷物を受け取り、タクシー乗り場に出ると、厳寒。凍りつき、身震いもできず。褐色の男に「ドゥ・ミニッツ」といわれるが、思いのほか早く車が来て助かる。移動。チェックイン。すると、今晩の部屋はひと晩かぎりですといわれ、入ってみるとこれが。ロフトつきのスイート的なつくりで、贅沢な気分に浸る。で、その片隅でちまちまと業務。

夜は夕食会。声を掛けてもらえるありがたさ。で、ホテルに戻り、上階のバスルームにて入浴。就寝も上階にて。自問自答の反復。
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3月8日(月) 晴れ
午前、展示会まわり。知人ふたりと立ち話をする。これは前週にも言われていたし、接客しながら自分でも感じたことなのだけれど、アジア人客の中で、中国系が増加しているのは当然として、それ以外で目立ったのは韓国人であった。彼の国の勢いを感じた。

夜は友人宅を訪ねる。で、夕食をご馳走になる。昨秋に生まれたばかりの赤ちゃんと対面したのだけれど、号泣。人見知りが激しいのだという。あと、近況の交換と、私的な転機の報告をする。
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3月9日(火) 晴れ
朝、例の件で最終オファーありとエージェントからメールが届いていた。年俸等、大まかな条件もつけて。周囲に報告のメールを入れる。
午前、ポンピドゥではない方の現代美術館へ。常設展は無料。で、収穫多し。午後はショップまわり。買い物も少々。
夜は、前回いってみようと思っていた路地裏の店にいってみたのだけれど、店内が閑散としていて、で、予定を変え、例の店で晩餐。アスパラガスの前菜と、牛のソテー。この牛が思いのほかおいしくて幸せな気分になる。
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3月10日(水) 晴れ
朝、チェックアウト。そのまま荷物を預け、久し振りのルーブル。二時間弱。で、ランチであの路地裏まで行ってみると中はぎゅうぎゅう。あきらめ、少し歩いてラーメン屋でマーボー丼とビール。食後、荷物を受け取りタクシー。空港。ラウンジ。強風でスケジュールが乱れたがどうにか帰国。しかしDETAXはできずじまい。さらに、空港でなにも買えなかったので土産が足りず。さて、どうしようか。
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今回の旅で感じたのは、自国の購買力の弱化。経済的影響力、存在感の低下であった。そうした中で、私はいま、職を変えようとしている。これも流れなのだろうか。この転機に、私はなにをしようとしているのだろう。
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機内でみた映画:『WHERE THE WILD THINGS ARE』
機内で読んだ本:『陰影礼賛』