原題 『INVICTUS』
祭りの中、黒と白が融和する。

美談だと思う。よく整えられた娯楽作品である。でも話が平坦ではなく、いろいろな想いを喚起させられるところに本作の魅力があるのだと感じた。たとえば、マンデラ大統領と彼の娘の関係。彼は、人種間の軋轢を埋める仕事に人生を捧げているのだけれど、他方で家族との間には問題を抱えているらしく、そのいろいろが彼と娘の関係に集約して描かれている。彼は娘に会いたいようなのだけれども、おそらく、娘は拒絶している。つまり彼は孤独なのだ。しかし孤独でありながら、あるいは孤独であるがゆえにということなのかもしれないけれど、マンデラは社会の、人々の融和を目指した。
しかし祭りの後、世界の何が変わったのだろう。と、知る限りの世界を見渡し、つい悲観的に考えがちになるのだけれど、おそらくイーストウッド監督が言いたいのは、諦めず、希望を持ち続けることがなにより大切だということなのだろう。実際、マンデラは、何十年もの間、独房の中で諦めなかったのだから。これはここ数年にわたるイーストウッド作品群に籠められている主要なテーマのひとつである。希望は、抱き続ける間、存在する。
あと、話の脇の部分で感じたのは、人を褒められる人間になりたいということで、マンデラが周囲の女性たちに優しい褒め言葉をかけるのだけれど、その度に心の中で復唱した。褒められると嬉しいし、だからきっと、人を褒めることはよいことなのだろう。
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先の金曜からワールドカップ南アフリカ大会が開幕。開催国である南アフリカは、初戦、メキシコと引き分け。