エロマンガ島で、エロマンガを読む。

エロマンガは、南洋に浮かぶ実在する島の名前である。という表題作の前提を知らないまましばらく読み続けた。しかし気づいたとき、そんな名前の島が実在するんだ、珍妙だな。と少し面白がったりはしたけれど、それ以上にどうということはなく、実際、作中においてもその駄洒落は駄洒落であるがゆえにあまり重要な意味づけはされてなくて、男たちが企画で島に持ち込んだエロマンガも、むしろ邪魔もののように、なおざりに扱われてしまう。
南の孤島という非日常の世界。その眩い太陽の下で、あるいは深い森の闇の中で、男三人、心の浄化がされたのかといえばそうでもなく、ただ島の人々の瞳はきらきらとして、星も瞬き、暗いはずの夜空もどこかきらめいて感じられて、たぶん、もうそれだけでよいのだ。その短い滞在で得られた経験は彼らに深い刻印を残し、その生涯になにかしらの、ささやかな影響を与え続けるだろう。男たちは、その記憶を脳裏にしまいこみ、それぞれの日常に戻ってゆく。
表題作のほかによかったのは「青色LED」。殺人の経験はないはずないのに、人殺しにどこか共鳴する自分がいた。あと、やくざな女と溺れるような色情を経験したわけでもないのに「ケージ、アンプル、箱」もよくて、ベランダから抜け出すあの醒めたシーンがなぜか印象に残っている。学生のころ、半裸で押入れに隠れた経験があるからなのだろうか。もちろん、その訪問者はやくざではないのだけれど。