
アダム・サンドラー演じるバリー・イーガン。彼は勝気な姉達にされながら育ったせいか、女性恐怖症気味で、コミュニケーション下手、そしてキレやすい。その彼が運命的に出会った女性と恋に落ち、成就させていく物語。
バリーは姉の同僚、リナに一目惚れするが、リナも既に彼の写真を見て恋に落ちている。そしてリナは不器用なバリーの全てを許し、受け入れる。そこに迷いがない。一歩間違えるとかなり危ない物語なんだけど、そこを映像の力で魅せ切るのはさすがだと思った。
シナリオに凝ってた過去の作品とは違って、ストーリーそのものはとてもシンプル。劇場で観たときはちょっと拍子抜けに感じたくらいだった。へんな思い込みがない分、今回の方が楽しめた。けっこうグッときてしまった。映像や音響の効果が素晴らしい。感情の動きと光や色彩、音が繋がり合ってて心に滲みる。彼の作品も繰り返し観たい欲求に駆られてしまう。
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「ブギー・ナイツ」を最初に観たのはTVだった。70年代の風俗を描いた軽いノリの映画だと思ってたらとんでもなかった。心を揺さぶられて泣けた。それ以来、ポール・トーマス・アンダーソンは心の友だ。彼の作品にでてくる人達は心に傷を抱えいて、孤独で、そして自ら犯した過ちに苦しんでいる。しかし物語の中でその罪が許される。そういった展開が多いような気がする。
彼が代表作をつくるのはこれからなのだと思う。新作の予定はないようだけど、早く観てみたい。