2005年02月17日

「天才マックスの世界」

rushmore.jpg「天才マックスの世界」ウェス・アンダーソン監督。私立校ラッシュモアに通う男の子マックスと周囲の人々が織りなす物語を描いた青春映画。

自分の父親が脳外科医だと嘘(実際は床屋)をついているマックスは誇大妄想気味で、彼の言葉や行動は自身の身の丈に全く合っていない。ありとあらゆる課外活動に精をだしているが勉強の方はさっぱりだ。校長からも嫌われ、成績の悪さから退学の危機に陥っている。

身の丈に合わなさ加減を象徴しているのがマックスの初恋だ。新人教師のローズマリーに恋心を抱き、背伸びをしながら懸命にアプローチする。しかしもちろん叶うことはない。叶うどころか彼女はマックスの数少ない友人のひとりであるハーマン・ブルーム(マックスの同級生の父親)と恋に落ちてしまう...

しかしマックスは失恋や退学などの挫折にめげることなく、自身が引き起こすトラブルに傷つきながらも成長し、少しずつ等身大の自分へと近づいていく。

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ウェス・アンダーソン監督は、このほろ苦い物語を独特のユーモアで包み込んでいる。マックスをとりまく世界に送られる彼の視線はとても繊細で、かつやさしさに満ちている。観ているこちらは、オフビートなネタについ噴き出し笑ってしまったかと思うと、ツボをつつかれてホロリとさせられたりと忙しい。人は人生の中で皆傷つき、癒し癒されながらそれを乗り越え、もしくは癒えない傷を引きずりながら生きていかなくてはならない。彼の作品に触れるとそういったあたりまえのことを再確認させられる。

マックスは自身が演出する演劇に唯一その才能を発揮する。W.アンダーソンはマックスに自身の昔の姿を重ねようとしているんだろう。上映された「セルピコ」と「地獄の黙示録」のパロディーにはなにか思い出でもあるんだろうか。このあたりは、とても私的な演出であるような気がする。ちなみに、マックスを演じたジェイソン・シュワルツマンはコッポラの甥にあたる。

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物語を章に分けながら綴るスタイルは「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」とも似ている。全体に漂う雰囲気、笑いのセンスや音楽のつかい方も共通していると思う。THE WHO, THE ROLLING STONES, THE KINKS, JOHN LENNONといった懐メロを効果的につかってる。難点は邦題とカバー・デザイン。もうすぐ日本でも新作が公開されるんじゃないだろうか。楽しみだ。

このブログを始めた時にも書いたけど、「ザ・ロイヤル…」はとくに期待もせずに観に行った。しかし上映が終わると館内で目立って感激してしまった。とにかく涙が止まらなくて、一緒に観た女性に呆れられた憶えがある。それ以来、このウェス・アンダーソン監督には一方的に友情を感じている。P.T.アンダーソン監督とならんで、このふたりのアンダーソンはアメリカ映画の希望だと思う。


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