2005年03月21日

「抱擁」 すべては生きながら死んでいる

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「抱擁」エゴン・シーレ(1917)
いまさらながら、映画「悪い男」の中で、女子大生ソナが画集から破りとって盗むシーレの絵のタイトルが、「抱擁」だということを知った。公式サイトで解説されていた。重要なショットだと自分で書いておきながらチェックしてなかった。いいかげん。そういえば、ぼくは91-92年に開催されたエゴン・シーレ展を観に行ったんだった。当時購入したカタログを眺めてみたけど、残念ながら「抱擁」は掲載されていなかった。

当時シーレの作品を鑑賞したことで今でも印象に残っているのは、異様に自画像が多いこと。あと伝わってくる身体の生々しさ。剥き出しになった肉体のヒリヒリとした感触というか...

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「悪い男」のキム・ギドク監督は、あのショットに「抱擁」をつかった理由を以下のように述べている。

「エゴン・シーレのことはよく知りません。(中略)−ただ彼の絵から伝わってくるもの─乏しく骨にまつわりついている肉の苦しみ、そのやつれた姿に苦悩が宿っているということ、この世界を生きることに深い軽蔑を感じながら、この世に存在せざるを得ない、まるで骨から離れられない肉のような頑なさ……、これらはみな、まさに私たちが悩まなければならない、逃れることのできない苦悩だと感じたのです。(中略)−ソナが切り取った絵を選んだ理由は、二人の肉体がもつれ合い、まるで鉄鎖のように絡まりあって抜け出せない、まるでソナとハンギのような気がしたからです」

このコメントを見つけたときに、ぼくはちょっと興奮してしまった。シーレの作品に対してぼくが漠然と感じていたものが見事に言葉にされていて、さらにあの映画から受けた感触とも重ねることができる。

(関連記事:「悪い男」 境界的世界の純愛物語/2005/03/18)

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また、自らの創造に関するシーレの言葉を引用すると、

「これは灰色の天国ではありません。ふたつの肉体がうごめく悲しみの現世なのです。ふたつの肉体は、孤独のうちに育ち、大地から有機的に生まれでてきたものなのです。この地上の世界によって、人物たちも含めて、本質的なものがすべからくはかないものであることを表現したいのです」

そしてタイトルでつかった「すべては生きながら死んでいる」という言葉もシーレのもの。シーレの作品の中に漂う死のイメージは、彼が15歳の時に父親を梅毒で亡くしていることとも繋がりがあるようだ。

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「悪い男」の公式サイトの中に、荒木経惟氏が賞賛のコメントを寄せている。自分が興味を持つもの同士が繋がり合うというのはありがちだけど、とても興味深い。


posted by Ken-U at 01:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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