2005年04月11日

現代に残る対称的世界 狩猟民マタギ

matagi04.jpgNHKアーカイブス「奥羽山系 マタギの世界」('87)

秋田県の阿仁町で狩猟民として生きるマタギの世界を取材した番組。マタギのリーダー、松橋金蔵氏(81)の最後の熊狩りの様子を追っているとても貴重なドキュメンタリー。

秋田県の阿仁町は人口が約5,000人。切り立った山々が迫り、半年は雪に埋もれる町。昔は人々を寄せ付けない、マタギだけが住む集落だった。取材当時では、狩りだけで暮らすマタギは4人まで減っている。松橋金蔵氏はシカリと呼ばれるマタギのリーダーで、集団で狩りをするマタギを統率している。15歳の時からマタギとして生きている。

マタギの狩りや生活様式は、古くから伝わる伝統や作法に則っている。その狩猟の様子や山の神との関わりの一部が映像化されいて、とても興味深く見ることができた。

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マタギが自然と一体となって狩りをする姿はとても印象的だった。サッテ、ナガサ、ワラダ、カンジキなど、マタギが使う道具の一部も紹介された。特にわらで編んだ円盤状の形をしたワラダ。これを雪に覆われた山の斜面に沿って投げると、鷹が飛ぶ時のような音が鳴る。それを聞いたウサギが近くの穴の中へ逃げ込む。それを見たマタギが雪の斜面を素早く駆け下りて、隠れているウサギを生け捕りにする。この時のマタギの身のこなしはとても動物的だ。背に動物の毛皮を纏っているのでさらに動物のようにみえる瞬間がある。このワラダによるウサギ狩りができると、マタギも一人前と見做されるそうだ。

他にも道具の使い方、火の起こし方、雪の上の歩き方、急斜面の登り方下り方、その全てに作法があることが紹介される。山の中での動き方には、熊やカモシカなどの動物から学んだものも多いようだ。古くから伝わる秘伝書の存在も紹介されていた。そこにはマタギの由来や使用する道具についての情報が記されている。

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現在では春の熊狩りの期間は1ヶ月と決められている。その期間にマタギは集団で熊狩りをおこなう。狩りに入る前日には、シカリが山の神へと御参りに行く。そして火と塩をつかった出陣の儀式をおこなう。

狩りの当日はシカリが「番割り」といってマタギそれぞれの役割を決めていく。マッパと呼ばれる銃で熊を撃つ担当と、セコと呼ばれる声を出しながら熊を追う担当に分かれて、それをシカリが統率する。セコは「ホリャ ホリャ」と叫びながら熊を山の尾根に向かって追い、追い詰めた熊をマッパが撃つ。熊を仕留めることに成功すると、マタギたちは「ショウブ ショウブ」と叫びながら、まだ雪の残る山の斜面を滑り降りて獲物の元へと集まっていく。

収穫した熊は、ケボカイという解剖の儀式にかけられる。これは収穫した熊の霊を山の神に返すための儀式。山は山の神によって支配されていて、熊は山の神からの贈り物だと考えられている。


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神仏と繋がりながら生きる狩猟民の名残りを、映像として見ることができてとても勉強になった。これからもマタギとして生きる人は減っていくのだろうから、この映像はとても貴重なものなんだろう。

マタギの世界は消えゆくのかもしれないけど、その精神世界の中にはなにか重要なものが隠されているのかもしれない。この記事の補足として、マタギについての情報がまとまっているサイトを勝手にリンクしておく。(リンクはココ
posted by Ken-U at 15:22| Comment(1) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
DVDはないでしょうか あればほしいのですが
Posted by 小島 康 at 2010年12月18日 08:39
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