2005年04月12日

「カイロの紫のバラ」 スクリーンが魅せるマジック

the_purple_rose_of_cairo.jpg「カイロの紫のバラ」ウディ・アレン監督を鑑賞。ウディ・アレンは出演していない。彼はカメラの向こう側で、スクリーンのマジックを巧みに扱いながら、観る者をミア・ファローと映画の虜にしてしまおうとしているようだった。

大恐慌下のニュージャージー。セシリアはウエイトレスとして働いている。夫のモンクは仕事に就いてない。仲間と博打を打ち、酒を飲み、女を家に連れ込み、そのうえセシリアに暴力をふるい、金をせびりながら暮らしている。孤独で貧しく生きなければばらないセシリア。そんな彼女の心を癒してくれるのは映画だけだ。この週、町の劇場では「カイロの紫のバラ」が上映されている。

セシリアはスクリーンに映し出される優雅な生活と、ある登場人物にすっかり魅了されてしまった。それは詩人であり冒険家でもあるトム・バクスター。だから毎日のように独りで劇場に通っている。驚いたことに、トムも彼女の存在に気づいていた。スクリーンの向こう側から、突然トムはセシリアに話しかける。そしてスクリーンから抜け出してセシリアの手をとって、劇場から逃げ出してしまう。劇中の他の人物も、観客も、劇場主も、制作会社も大騒ぎだ。

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この事件を収拾しようと、トム・バクスターを演じている俳優、ギル・シェパードがハリウッドから駆けつける。そしてギルもセシリアに心を奪われてしまう。トムはスクリーンの中へとセシリアを誘い、ギルはハリウッドへと彼女を誘う。セシリアとふたりの男たちの不思議な三角関係。セシリアはトムかギルのどちらかを選ばなければならない。選ぶべきは夢か現実か...

現実を選んだつもりだったセシリア。やっと自分の居場所が見つかった喜んでいられたのもつかの間、彼女にはさらなる現実が待っていた。そしてセシリアは荷物を抱え、独り劇場へと戻ってくる。

*****

セシリアはその表情を暗く沈ませたままスクリーンを眺めている。そこには優雅な音楽にあわせて踊る男女の姿が映し出されている。スクリーンから放たれる光は、セシリアの顔をほのかに照らしている。そしてセシリアは少しずつこの美しいダンスに心を奪われていく。この心の動きとともに、彼女の表情は緩み、柔らかさをとりもどしていく。スクリーンの光も彼女の顔をより明るく照らしていく。涙に濡れているのか、彼女の瞳はきらきらと輝いて見える。

ミア・ファローの演技が素晴らしい。この美しいラストのために、ウディ・アレンはこの作品を撮ったんじゃないだろうか。そう思わせる作品。


posted by Ken-U at 17:20| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画(USA) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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『カイロの紫のバラ』〜虚実のボレロ〜
Excerpt: 『カイロの紫のバラ』   監督:ウディ・アレン出演:ミア・ファロー ジェフ・ダニエルズ ダニー・アイエロ         【あらすじ】..
Weblog: Swing des Spoutniks
Tracked: 2005-06-22 00:19
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