『リトル・ミス・サンシャイン』 / 原題『LITTLE MISS SUNSHINE』 (シネクイント)
いわゆる「ミスコン」というイベントは、それまで多様であった女性の美の基準を切り分けて、それを均質なものにつくりかえてしまう。さらに、その勝者である「ミス」の容姿は、マスメディアによって流布され、女性たちの脳裏に見えないコルセットとして刷り込まれて、自由であるはずの現代女性の身体を類型的な美の枠の中に縛りつけようとする...
本作は、オリーヴが念願のミスコン出場の夢をかなえ、家族とともに会場を目指して旅をし、そのステージでひと騒動やらかすまでの過程を描いている。彼女が、美の勝利者を目指して心躍らせる様子を眺めていると、ふと上にあるようなミスコン批判の言葉を思い起こす。たしかに、本作で描かれるミスコン会場の女の子とその親たちは、皆どこか病的で、とても醜くみえてしまう。しかし、オリーヴはそれでも輝かしい「ミス」の座に夢中なのである。ただし、オリーヴに限らず、彼女の家族もそれぞれに勝利のレースに狂い、あるいは巻き込まれて、しかも、皆それらのレースから転落しかけている。彼らはみな敗北者なのだ。そして自覚なき負け犬たちは、互いに反発しながらも、オリーヴの夢のために旅を続ける。そしてついに、彼らが味わう敗北のクライマックスであるミス・コンテストが幕を開けるのだ。*****
とてもよくできたコメディだと思う。とくに、映像と音楽のバランスが絶妙である。いい意味でMTV出身者なのだなあ、と思った。役者それぞれの演技も冴えているし、とくに、オリーヴが可愛らしいのがよい。ニーチェに傾倒しているドウェーンの立ち振る舞いもよかったし、プルースト学者である(であった?)彼の伯父フランクが、ミニバスから飛び降り、会場を目指して走る姿などは胸に迫るものがあった。それに、あのステージでの大騒動はかなりベタだったけれど、あのベタを「あり」だと思わせる力がこの作品にはある。笑いながら、ちょっとぐっとくるような、そんな瞬間が度々ある作品である。
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ミスコンを終えた後も、一家は壊れかけたミニバスで旅をする。皆の力を合わせなければ動かないこの古いミニバスは、それでもアメリカのハイウェイを走り続ける。そのハンドルを握るのは、一家の主である父親でなければならない。母親が運転しようとしても、うまくギアが入らないのだ。コンクリートで平坦に均された道路の上を、彼らを乗せたバスが軽快に駆け抜けていく。この旅を通して、彼らの何が変わり、何が変わらぬまま残されるのだろう。


