2005年09月07日

「妻」 怖い女に翻弄される男

成瀬巳喜男監督の「妻」を鑑賞。夫婦関係の破綻を悲喜劇的に描いた物語。

「めし」に近い話。でも結末がずいぶんと違う。殺伐としたラストに向かって、物語は喜劇的に描かれながら進んでいく。

tsuma.jpg中川十一と美種子は結婚して10年になる。十一の安月給を、美種子の内職で補っている。結婚して10年にもなると、夫婦は男と女ではなくなっていて、美種子の振る舞いからも、女の色気を感じることはできない。表情にしてもそうだし、煎餅にはバリバリと噛りつくし、箸を楊枝代わりに使うし、お茶で口を濯いでみせたりする。
そんな夫婦の関係は冷え切っていて、お互いの心の中には夫婦生活に対する疑問が燻ぶっている。

そんな日常を送る中、十一は同僚の相良房子に惹かれていく。というか、それとなく房子に誘惑されている。房子は絵画を好む子持ちの未亡人で、やがて会社を辞め、実家のある大阪へと帰る。実家から「葉書」で十一に便りを送るところに、女の怖さが表現されている。そして美種子は気づく。十一は大阪出張の際に房子を訪ねる。女に翻弄されていく。

*****

中川家は間貸しをしていて、その住人達の物語も並行して描かれていく。仕事のない夫に愛想を尽かして出て行く女、パトロンに囲われてひとりで住んでいる銀座のバーの女、その女を訪ねるパトロンの妻。それら複数の物語が巧みに編まれている。

美種子のキャラクターが様々なかたちで表現されているのも面白かった。特に台所のシーン。彼女は与えることに無関心で、他者から与えられることにばかりに拘っている。そこが彼女の致命的なところ。

美種子も房子も違うタイプの怖さを持った女。十一はふたりの女に翻弄される。成瀬巳喜男は女性を描くことに定評があるけれども、その視線はとても男性的だなと感じる。


posted by Ken-U at 12:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画(成瀬巳喜男) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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