2005年09月08日

「晩菊」 金が引き裂くもの

成瀬巳喜男監督の「晩菊」を鑑賞。再び金と情をめぐる物語。

bangiku01.jpg元芸者で金貸しをしているおきんを中心に物語が進む。冒頭、おきんは札束を数えている。独身で、身寄りもなく、金だけを心の支えにして生きている。唯一の同居人は女中として雇っている若い娘。耳も聴こえず、口も利けない娘を雇うところに、他者を必要としないおきんのキャラクターが強調されている。そんな金とともに生きる女を、杉村春子が好演している。こういう役ははまる。でも作品としては地味になるかな。

おきんと対照的に生きる存在として、元芸者仲間のたまえ、おとみ、のぶの3人が登場する。この3人は貧しく暮らしている。のぶには夫もいて飲み屋を経営しているが、たまえとおとみは未亡人で、家計は常に逼迫しているようだ。
たまえとおとみは貧しく暮らしているのに金には執着しない。子供の存在が彼女達の心を支えている。しかしその子供達も彼女達の元を去っていく。それでも彼女達は子供を持てたことに感謝している。たまえとおとみが酒を酌み交わし、子供を持てたという事実に乾杯する姿がとても印象的だった。

おきんは元の仲間にも金を貸していて、取り立ても厳しいことから、皆に憎まれている。しかし、おきんがそうなったのも理由があって、彼女なりに重いものを抱えながら生きている。確かに金は彼女を支えるようになったけど、その一方で他者から引き裂いてもいる。独りで生きていく女の哀しみが、淡々と描かれていた。

たまえとおとみが乾杯するシーンを眺めていて、何故か「コーヒー&シガレッツ」のラストを連想してしまった。でも、こちらの乾杯の方が生命力に溢れている。おとみのモンロー・ウォークに笑った。


posted by Ken-U at 12:52| Comment(2) | TrackBack(1) | 映画(成瀬巳喜男) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ。Ken-Uさんは、おきんさんが印象に残り、着目されたんですね。(私もです!)
読んでて、とても面白かったので、ぜひトラックバックさせてください。これからも、よろしく願いします
Posted by noho_hon at 2005年09月10日 06:11
noho_honさん、TBとコメントありがとうございます。

そうですね。やっぱり、おきんさんには着目してしまいます。人生カネだと割り切るために、捨て去ったものがあるんですよね。
成瀬作品の中ではカネと情が相反する存在として描かれることが多いですね。
Posted by Ken-U at 2005年09月10日 11:09
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック

[映画] 『晩菊』
Excerpt: いつも作品を見てのち、ネット・サーフィンしては「なるほどなぁ…」「そういう視点もアリなのかぁ…」と感心しまくってるのですが、失礼ながら、今回は最高に「笑ってしまった」回かもしれません。 いや、基本的に..
Weblog: のほほん日和
Tracked: 2005-09-10 06:08
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。