2005年09月15日

「おかあさん」 静かな家庭崩壊劇

成瀬巳喜男監督の「おかあさん」を鑑賞。ある貧しい家庭の物語。

okasan02.jpg福原家はクリーニング店を営んでいたが、戦災で店を失ったしまった。父親の良作は工場の門衛をしながら店の再建に取り組む。福原家の5人とひとりの家族、そして再開した店を取り巻く人々の姿が、哀感を込めて描かれている。

働いて家族を支えるべき男達の不在は、この作品の中でも強調されている。
長男の進は奉公先で病気になり、遂には命を落としてしまう。良作も店の再開を目前にしながら病に倒れ、そのまま亡くなってしまう。
正子の妹、則子は未亡人で、小さな息子と共に満州から引き上げてきた。自活するために髪結いの資格をとろうと努めている。息子の哲男は正子が預かっている。近所の女たちも夫や息子を戦争で失っている。

男のいない環境の中で、自分を犠牲にしながら働く女たち。そして子供たちも。「商売」「経済」というセリフが多用されているのが印象的だった。この作品でも、情や絆がカネや経済の力に脅かされている。そしてカネの世界を受け入れながらも、何かを懸命に守ろうとする者の姿を成瀬監督は繰り返し描いている。

*****

死後も残る父親の面影。その描き方も滲みる。大切なものを失い続けながらも献身的に生きる母親。彼女の元から去っていく家族。とても哀しい物語なんだけど、喜劇的なエピソードが挿入されているので娯楽作品として鑑賞することができる。というか、娯楽性の強い作品なのかも。長女の年子の存在がとても利いている。彼女の視線に救われる。

長屋街の路地を走る子供、街を練り歩くちんどん屋がこの作品の中にも登場する。成瀬監督の生い立ちと深く繋がる映像なんだろう。


posted by Ken-U at 18:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画(成瀬巳喜男) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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