2005年09月22日

「乱れ雲」 そして引き裂かれる

成瀬巳喜男監督の遺作、「乱れ雲」を鑑賞。司葉子が主演。あのドキュメンタリー以来(過去記事)、この美しい女優に興味が湧いてしまっている。そして「乱れる」同様、加山雄三が共演している。1967年の作品。

midaregumo01.jpg戦争、アメリカ、TV、カネ。そして堕胎が描かれている。近代が母性を殺している。そして引き裂いてしまう。

由美子の夫、江田宏はアメリカ赴任の直前に事故で死ぬ。アメリカで成功を果たす前に、成瀬監督はこの男を殺してしまうのだ。そして由美子と三島をこの男の死の影に縛りつけてしまう。

遺作というのに、この作品から衰えのようなものは感じられない。むしろ凄みが増しているような印象を受ける。これもかなり残酷な作品。惨い。昨晩の「乱れる」同様、観ていて言葉を失い、呻いてしまうような作品だった。語るよりも観るべき作品だと思う。

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十和田湖でふたりが和解をした後、三島は熱を出し、寝込んでしまう。熱にうなされながら、三島は由美子に手を握ってくれと頼む。いったん手を添え、そして握り直す時のショットがたまらなくいい。この作品に限ったことではないけど、ディテールの描き方が素晴らしくいい。

そして終盤。ふたりはタクシーに乗る。山道を奥深く進んでゆく。そして踏切にさしかかる。ふたりは踏切を越える。さらに果てへと進むときに、ふたりは見てしまう。そして引き裂かれる。
「乱れる」と同じように、「果て」への移動と、それでも結ばれないふたりの運命が描かれている。そしてラスト。霧にかすんだ十和田湖が死の世界の入り口のように見える。そして湖面に伸びる桟橋。由美子の後ろ姿。

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これだけの作品の中に、喜劇的な要素が配置されている。しかし50年代の成瀬作品とは違って、笑うことができない。むしろ、恐ろしいと感じてしまう。成瀬監督はいつものように冗談を言いながら、淡々と静かにこの作品を撮り進めていたそうだ。

繰り返しでてくる「窓」がとても印象的だったけど、その意味がうまく掴めなかった。それが少し残念。それは次回までの宿題にしよう。


posted by Ken-U at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画(成瀬巳喜男) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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