2005年09月27日

「流れる」 狭間に立つ柳橋

成瀬巳喜男監督の「流れる」を鑑賞。豪華女優陣が競演する娯楽劇。

また成瀬作品を観てしまった。先日の「乱れ雲」で、特集も一段落といったところだけど、深夜枠で放送は続いている。それでついつい観てしまうのだ。それにしても、彼の作品は飽きることがない。

この作品のみどころは、やはり豪華な女優陣ということになるだろう。山田五十鈴、田中絹代、高峰秀子、杉村春子、岡田茉莉子らが各々の技芸を競っている。この作品で18年ぶりに栗島すみ子が復帰したそうだけど、残念ながらぼくはこの女優のことを知らなかった。それもそうだ。この作品自体、ぼくが生まれる10年も前に公開されたものなんだから。

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nagareru01.jpg舞台は柳橋にある芸者置屋の「つたの屋」。戦後から拍車のかかった西洋化の波は、この置屋の経営をも行き詰らせている。女将の娘、勝代は芸妓の道を選ばなかった。その道に将来がないことが判っているからだ。

職業安定所の案内で、梨花という女が面会に来る。彼女は未亡人で、子供も亡くしている。田舎から出てきて自活しようとしているが、年齢のために就職先が見つからない。そんな彼女を、女将のつた奴は雇うことにする。
その後、芸妓たちの姿が梨花と対比されながら描かれる。彼女は異質な存在で、芸妓たちが持っていないものを持っているからだ。「梨花」という名前が、置屋では「お春」になる。彼女は「お春」としてつたの屋に馴染むが、彼女は「梨花」でもあるのだ。

存続の危機に直面している芸者置屋とその女将、そして芸妓たち。それぞれが問題を抱え、葛藤しながら生き延びようと努めている。勝代はそこから抜け出そうともがいているが、玄人女と素人との狭間で居場所を失い、行き詰まってしまっている。

そして梨花。彼女にもある決断が迫られ、「お春」と「梨花」の狭間で葛藤する。そして彼女は、芸妓たちの稽古をじっと眺める。揺れている。そこに、自室にいる勝代のショットが挿入される。そして柳橋の象徴的なショット。

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中盤、少し緩むのが残念だけど、終盤にかけて濃密になる。特に、ラストに至る物語とショットの流れが素晴らしい。そこでは「狭間」に立たされるものが、重層的に描かれている。

「浮雲」の成功により、多くの予算が充てられたんだろう。つくられたセットも豪華だった。2階の部屋のシーンでは、向かいの家の部屋まで作りこまれていて、そこで住人が掃除をしていたりもする。オープンセットもロケとの判別ができない規模で作られている。ただし、キャスティングも含め、成瀬作品としては規模が大きすぎるような気がしなくもない。


posted by Ken-U at 16:57| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画(成瀬巳喜男) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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