カフェでココアを飲みながら、神経病者の言葉を読む。テキストは持ち帰ることができたのだ。オープンエアが心地よく、なんだか眠くなってしまう。それでもぼくは眠らずに、西新宿を目指した。

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古都の国宝をアラーキーが撮る。なにかいつもとは趣向が違うな、という気がしたけども、実際の作品を眺めると、なるほどアラーキーの写真だと感心させられた。
展示されている作品は、全てエプソンのプリンターで印刷されたもので、そういったデジタルなプロセスで出力されたものであるにもかかわらず、どの作品からも、しっとりというか、ねっとりというか、そういった”湿り気”を感じることができた。
庭園の池が写された作品が多い。なめらかな水面には楼閣の影が浮かび上がり、その上には木の葉が散り落ちている。周りの石は雨に濡れているか、木の影がかかっている。「水」や「影」から強い湿り気を感じる。それにアラーキーの撮る影はとても深い。「影」というより「闇の入り口」といった印象。女性の身体や性器がそこになくても、その気配を感じてしまうような展覧会だった。