2005年11月05日

「家庭」 この世界との繋がり

フランソワ・トリュフォー監督の「家庭」を鑑賞。原題は「DOMICILE CONJUGAL」。「夜霧の恋人たち」に続く、ドワネル・シリーズの4作目にあたる作品。

domicile_conjugal03.jpg家庭を築いたアントワーヌとクリスチーヌ。クリスチーヌは、まだ人妻には見えないほど初々しく、とても魅力的に描かれている。トリュフォー監督は、彼女の美しい脚を執拗に追い続ける。

ドワネルはあいかわらず。職にも就かず、自宅下の中庭で、花を染める実験を繰り返している。「赤が足りない」。アントワーヌはそう叫ぶと、白い花の束を赤く染めようと実験を始める。白かった花は見事に赤く染まるが、1輪だけは染まらずに白いまま束の中に残っている。その理由はアントワーヌにもわからない。アントワーヌの試行錯誤は続く。実験がうまくいけば、染めた花で商売ができると彼は企んでいるのだ

そんなアントワーヌを、クリスチーヌはやさしく見守っている。彼女がバイオリンの教師をすることで、家計が支えられている。彼に対する彼女の両親の眼差しもとても暖かい。この親子のおかげで、アントワーヌはこの世界と繋がることができている。子供の頃、アントワーヌが失ってしまったものが、そこにはある。だからアントワーヌは、クリスチーヌだけではなく、彼女の家族のことも強く愛しているんだろう。そしてクリスチーヌは、彼とこの世界を繋ぐことのできる唯一無二の存在なのかもしれない。

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例の実験に行き詰ったアントワーヌは、またもや人生の分岐点に立たされてしまう。アメリカ企業への就職と妻の妊娠。そして新しい恋。別の世界から現れ出たキョウコに、アントワーヌは強く惹かれてしまったのだ。彼はどうしてもその魅力に逆らうことができなかった。アントワーヌがアントワーヌである限り、その悪癖は治まることがないんだろう。

浮気がばれてしまったアントワーヌは、この世とあの世の境界を右往左往するしかない。この世とはもちろんクリスチーヌのいる世界、あの世はキョウコのいる世界だ。しかし、あの世はあの世でしかない。生きていながらあの世の中に根を張って暮らすことなど、できるわけがないのだ。

夫婦の危機に陥りながら、別れようにも別れきれないアントワーヌとクリスチーヌ。ふたりの関係は危機的なものになってしまったが、その結末は曖昧なままだ。そしてふたりの運命は、続編へと引き継がれていくのだった。

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前作と比べると、やや陰りのようなものを感じてしまう作品。物語のトーンもそうだけど、作品自体の出来にもそれを感じてしまった。
posted by Ken-U at 17:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画(フランス) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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