先日、フランスのCPEをめぐる騒動について少し触れたのだけど、その直後に同法案が撤回され、代替法案が成立した。その関連記事を一部引用しておく。
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「フランス:新雇用策撤回 ドビルパン首相、打撃 大統領レースに影響」(
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(前略)◇学生らの団結画期的−−日本の労働問題に詳しいポール・ジョバン仏パリ第7大学助教授の話
CPEを撤回させたのは、大学を卒業しても安定した仕事に就けない状況に対する学生たちの怒りだったといえる。
親の支援を受けてもアルバイトしないと生活できない中間層の学生たちは、不安定な雇用問題にとても敏感だった。
当初、発表された段階ではCPEの内容が十分知らされず、国民の7割以上が賛成だった。その後、反対運動が盛り上がり、わずか1カ月で立場は逆転、反対が7割を超えた。若者を2年間も研修生扱いし理由もなく解雇できるというCPEの差別的な内容が明らかになったからだ。(以下略 / 2006年4月11日 毎日新聞)
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「仏の若者雇用促進策、代替法案が成立」(
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【パリ=島崎雅夫】フランス上院は13日、前日の国民議会(下院)に続いて、政府が撤回した若者雇用促進策「初期雇用契約」(CPE)の代替法案を賛成多数で可決、同案は成立した。
同案は、与党・民衆運動連合(UMP)が提案、学歴が低く、職業資格が不十分な若者を正社員として雇用した企業への補助金支給や職業訓練の強化などを盛り込んでいる。ただ、従来の政策の繰り返しに過ぎず、初期雇用契約のように、硬直した労働市場を抜本改革する内容とはなっていない(2006年4月14日 読売新聞)
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当初の法案が撤回されたからといって、フランスの雇用状況が好転するというわけではないのだろう。ただ、現状、労働者の権利が手厚く保護されていることが、若者の雇用に悪影響を及ぼしているという言説も、いかがなものかと思う。
一方、日本社会においては、雇用をめぐる規制緩和が粛々と進められていて、実際、統計上は雇用状況が好転しているともいわれている。ただ、雇用されたとしても、与えられる条件が劣悪な場合もあり、とくに派遣社員の雇用環境は悪化しているという指摘もある。
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「縦並び社会・格差の源流に迫る:倒れるまで働け」(
link)(前略)労働時間規制と並ぶ労働分野の規制緩和の柱に労働者派遣事業の解禁がある。これも財界の圧力にさらされてきた。
派遣労働の業種拡大に向け、派遣法の大幅改正の審議入りを控えた90年代半ば。旧労働省事務次官に旧日経連から電話があった。「今さらあの先生でもないでしょう」。審議を担当する旧中央職業安定審議会の会長を替えるよう迫った。
名指しされたのは「業種をむやみに広げると労働者の低賃金化を招く」として規制緩和路線と一線を画す高梨昌・信州大名誉教授。結局、高梨氏は法改正には直接関与しない旧雇用審議会の会長に「棚上げ」される。改正論議は財界主導で進み、製造現場への派遣も04年に解禁された。
85年に初めて法律で認められた派遣労働者は今、250万人。この元次官は「当初は派遣労働の分野が無秩序状態になるのを避けるため、法律が必要という発想だったが(派遣法の改正を経て)こんなに増えるとは想定していなかった」と打ち明ける。
(以下略 / 2006年4月4日 毎日新聞)
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「労働時間法制:ホワイトカラーにも残業代適用除外 厚労省」(
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厚生労働省は11日、一定水準の年収があり、仕事の裁量幅も大きい「ホワイトカラー」について、残業代や休日手当の支払い対象から除外する新たな労働時間法制の「視点」を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に提出した。これを受け、来年の労働基準法などの改正をにらんだ審議がスタートした。
(以下略 / 2006年4月12日 毎日新聞)
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酒を飲みながら周囲の人たちと会話していても、ここ3-5年で、職場の環境が悪化したという話を聞くことは多い。業界の中で、いわゆる「勝ち組」と呼ばれる企業においても、業績を維持するための圧力が年々増していて、それに耐えられずに、誰もが羨むポジションを捨てて会社を去る人も出てきている。業績が好調な企業においても、得られた利益が還元されるのは一握りの人たちに限られてきているようだ。企業の内部でも富の集中が起こり、職場環境の”イスとりゲーム”化が進んでいるような気がする。
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雇用といえば、私的にも約1ヵ月後に動きがある予定。その件についてはいろいろと考えることがあるので、来週にでも何か書き留めておこうと思っている。ぶらぶら生活も、もう少しで一段落といったところだ。
posted by Ken-U at 19:04|
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