吉永小百合主演のアイドル映画。基本的にはコメディとして仕立てられているけれど、扱っているテーマは結構重い。高度経済成長期における家庭の崩壊を背景に、入り乱れる自由恋愛の光と影が描かれている。

桜子の新しい職場は山手にある高級住宅街の豪邸である。家の主は放送作家、その妻は女優で、彼らはたいへんに贅沢な暮らしを送っている。桜子は当初、足を踏み入れた華やかな世界に魅力を感じるが、その裏側を垣間見ることによって、次第に気持ちを変化させていく。夫婦仲は既に冷め切っており、互いに愛人をつくって不倫を楽しんでいるが、相手のことは見て見ぬ振りをしている。そんな”豊かな”生活に幻滅している矢先に、桜子はある事件に遭遇してしまうのだった。
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桜子の周囲は自由恋愛で溢れている。そして豪邸の主人やその運転手、出入りの酒屋、駆け出しの役者など、様々な男たちに口説かれ、その誘惑をすり抜けながら、桜子はカネと結びついた自由(恋愛)について心を悩ませなければならない。カネは自由を生むが、その豊かさが生む自由(恋愛)の中に、果たして自分の幸せが見つけられるのかどうか。思い悩む桜子の脳裏には、いつもある男の姿が浮かんでいる。
ある男とは久子の兄の圭太のことで、圭太と桜子は互いに想いを寄せ合っているけれども、その気持ちに素直になることができてはいない。圭太は真面目だけが取り柄の、うだつの上がらない月収2万の声優という設定である。果たしてその恋の行方はどうなるのか、といった陳腐なファンタジーの世界にこの物語は突入していく。
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ファンタジーの分量が少ないせいか、”陳腐”とはいってもなかなか楽しめてしまう作品だった。ところで、このての物語を眺めていると、どうしても”ベタ”な結末を期待してしまうのはいったい何故なんだろうか?